三重の酒
伊勢神宮のお酒

 「御神酒(おみき)あがらぬ神はない」というように、神様とお酒 とは昔から深いつながりがあります。
 どこの神社でもお祭りには必ずお酒がお供えされますが、その起源は遠く神代にまで遡ると思われます。平安初期の文献「皇大神宮儀式帳」に酒作物忌(さかとくのものいみ)・清酒作物忌(きよさかとくのものいみ)などの職掌 が見え、神宮においても古くから神饌(しんせん=神様のお供え物)としてお酒が大切に取り扱われていたことがわかります。
 特に最も重要なお祭りである三節祭(さんせつさい=6月・12月の月次祭と10月の神嘗祭)には今日でも、白酒(しろき)・黒酒(くろき)・醴酒(れいしゅ=ひとよざけ)・清酒の4種のお酒がお供えされますが、このお酒は清酒を除き皇大神宮の神域にある忌火屋殿(いみびやでん=神饌調理所)において古式どおりに奉醸されます。
 この醸造に先だち御酒殿(みさかどの)の大神に、その奉醸が麗しく出来ますよう祈念し、御酒殿祭(6・10・12月の朔日)が斎行されます。
 なお、御酒殿にはお酒の原料となる糀(=麹こうじ)が奉納され、神宮は伊勢税務署から正式に酒類製造免許を受けています。
本来お供えするのは清酒(きよざけ)でありますが、現在では清酒 (せいしゅ)が用いられております。清酒については三重県の蔵元はもとより、全国の蔵元からご献酒を申し上げております。三重県酒造組合では、神聖な御酒殿祭が無事行われるよう必ず参列し、あわせて三重の酒の蔵元が気迫と誠意をこめたおいしい酒造りに打ち込めるよう祈念しております。

 
白酒と黒酒の説明

「白酒・黒酒の神宮における造り」
仕込は神官により古くから伝えられた方法に則り行われる。酒母を たてることなく、蒸米・米麹・水を一度に仕込む、いわばどぶろく仕込方式であり、仕込後12日で熟成、これを笊でこして酒と粕に分離する。検定後二分し、片方が「白酒(しろき)」で文字通り白 く濁った酒であり、ある種の草木灰(久佐木之灰)を加えたものが 「黒酒(くろき)」である。醴酒(一夜酒)は甘酒の一種で、神宮では水が少ないため固いおかゆのようなものである。
(加藤百一「神社と酒」より)